中国経済発展計画及び投資提案


上海厳義明法律事務所 弁護士 厳 義明

2009年、現在も尚、全世界の景気後退は続いている。但し、中国は例外と言えよう。

そして、中国の国内総生産(GDP)は8.7%増加し、小売売上高は実質16.9%増加し、通年の固定資産投資比率は前年比30.1%増加し、都市と鎮の住民の人口一人当たりの可処分所得は前年比9.8%増加した。同年において、中国はドイツを越えて世界1位の輸出国になり、国内の新車販売もアメリカを越えて世界のトップに躍り出し、さらに2010年中国のGDPは日本に替わって世界2位まで上ると予想されている。

中国の経済発展方式は典型的な政府主導型に属しており、長所と短所について、全世界の経済学界で既に多く討論されているが、経済学者がこのモデルをいかに取扱おうとも、一致した見解は、この方式の中国の経済発展の方向は、政府の計画及び関連する政策のサポートと密接に関係するという点である。

これに基づいて、本稿は国内消費市場の現状及び中国の現行の経済発展計画、政策についてマクロ的に紹介し、かつ、投資の方向性について提案するものである。

一、中国国内消費市場の現状

2009年、中国国内消費市場の増加は著しかった。2010年2月25日に、商務部はさらに「十二五」末期(「十二五」とは、中国の第十二個五年発展計画で、2011年から2015年までをいう。)に中国が全世界の最大消費市場に接近する見込みを表明した。

消費領域において、家電、自動車、住宅等の高額商品は着実に増加し、旅行等のサービス業の増加は大きく増加し、農村消費市場は継続的に拡大し、健康食品、薬品等人口高齢化との関連製品の需要は盛んだ。

1、家電及び農村消費市場

2009年、中国政府が計画的に一連の政策である「家電下郷」(「家電下郷」とは、家電製品を広大な農村部市場へ普及させることを意味する)、「自動車・オートバイ下郷」及び「古いものを新しいものと交換」等の多くの消費刺激策を発表し、消費市場は大変な活気となった。

「家電下郷」を例に挙げると、2009年度末に家電下郷情報システムを通じて登録した生産企業が累計9245.05万台を出荷し、出荷金額は1627.53億元(約2、1兆円)である。販売企業が情報システムを通した家電下郷製品は3767.98万台を登録販売し、販売金額は692.57億元(約9002億円)である。

「家電下郷」、「自動車・オートバイ下郷」等の政策は効果的に農村消費市場を活性化した。農村消費の増幅は1986年以来初めて都市を越えた。2009年農村の小売売上高は4兆元(約52兆円)を突破し、農村消費市場の規模は拡大し続けている。特に、耐久消費財は急増しており、コンピュータ、エアコン、カメラ、冷蔵庫、携帯電話、自動車等の需要は2009年度の農村消費のキーポイントになった。

2、自動車消費市場

アメリカ市場調査会社AUTODATAの統計によると、2009年アメリカの新車販売台数(初値)は1042.95万台であり、前年比約21%大幅に減少し、1982年以来の最安値を記録した。中国は2009年1~11月の新車販売台数は累計で1,223万台であり、通年で中国が初めて世界最大の自動車市場に踊り出た。

3、住宅及び関係製品の消費市場

2009年末までに、全国の住宅販売面積は9億3713万平方メートルに達し、前年比42.1%増加し、住宅市場は急激に増加した。

これに伴って、2009年度、家具類小売額は35.5%増加し、建設・建材関連は26.6%増加した。

但し、2009年末から2010年の年初まで、政府は一連の政策を発表して住宅価格を抑えた為、現在、不動産消費の増加率は落ちている。

4、旅行消費

通年国内旅客数は19.0億人に達し、前年比11.1%増加し、国内旅行収入は1兆184億元(約14兆円)で、16.4%増加した。国内の住民の海外旅客数は4,766万人に達し、4.0%増加した。その内個人での海外旅行は4,221万人であり、5.2%増加し、海外旅客数の88.6%を占める。

5、人口高齢化による消費

2009年、全国において60歳以上の高齢者人口は1億6714万人に達し、前年比12.5%増加した。

これにより、健康食品、医薬品、医療器械及び高齢者の日用品の需要は盛んで、介護、養老サービス等の消費は持続的に上昇した。中国では人口高齢化のピークは2030年に到来し、将来において、高齢産業及び、それに関連する消費は持続的に増加すると予想される。

二、中国の地域発展計画

1990年代末期から、中国は西部大開発、中部の飛躍促進及び東北等の古い工業地の振興、珠江デルタ、長江デルタ、天津濱海新区等の地区の発展戦略を発表し、更に多くの経済成長圏を育成し、地域の調和と発展を一層促進するために、近年、以下の通り一連の最新地域発展計画及び関係書類を採択した。

上述の計画及び書類については、地域毎に見ると、沿海分布を重視する以外にも各省の境界の開発も重視しており、東部や南部から中部、西部、東北地区にまで及ぶ。それによって地域開発が全域に広がる傾向にあり、東部、中部、西部が同時進行で共同発展する構造になり、これが中国地域発展戦略の細分化と深化である。

産業及び開発基礎に見ると、沿海の幾つかの地域はより良い開発の基礎を具備しており、更に多くの地域は依然として国際市場の外部需要に向けて、グローバル化のプロセスと融合し、中部と西部の地域は大きな開発の潜在力を有し、更に多くの国内市場の内部需要に配慮している。

異なる地域開発計画は、すべて発展方式転換の基礎上に打ち立てて、資源の節約、環境にやさしい持続可能な発展の路線を歩む。これらの変化は中国が更に地域調和発展、集約式発展、持続可能な発展、人と自然の調和的発展を目指す新構想である。

三、中国の産業振興計画

上述の地域振興計画を除き、金融危機の背景下で各業種の発展について、国務院が10大産業振興計画を制定した。「汽車産業振興計画」、「鋼鉄産業振興計画」、「繊維産業振興計画」、「設備製造業振興計画」、「船舶産業調整振興計画」、「電子情報産業振興計画」、「石油化学産業振興計画」、「軽工業振興計画」、「有色金属業振興計画」及び「物流産業振興調整計画」であり、間もなく「新エネルギー振興計画」が新たに制定される。

上述の計画及び書類については、すべて内需拡大・増加保持・産業転換”を実現するためのものである。具体的な措置は優遇政策、免税政策を延長する等を通じて企業の負担を軽減することであり、「家電下郷」等の政策を打ち出して内需を拡大し、消費を増やすことである。

四、投資提案

上述に基づいて、以下の通り提案する。

1、投資は中国地域発展計画に符合すべきである

地域計画から見ると、沿海地域において金融、サービス及びハイテク製造の発展を重視しているが、その他の伝統産業は中西部に移転し、この産業移転のプロセスに伴って以下の発展情勢を逐次形成している。

(1)   東部の沿海地域と中西部は相互補完する効果を形成され、協力発展し、東部から中西部へ逐次“前店後工場(「前店後工場」とは、中西部で安い労働力と広大な土地を生かして製造したものを東部の市場で商売することと、東部の企業が販売するを意味する。)”の経済配置を形成する。実際は既に一部で現実化しており、例えば、皖江都市地域の加工製品の50%以上は長江デルタで組み立てられている。

(2)   産業の移転プロセスが同時に中西部の都市化のプロセスを伴う。これは発展産業が沿海地域から中西部に転換すると同時に、新たな消費市場も次第に中西部農村で形成し、家電・日用品の生産等の発展業界について言えば、中西部において新しい巨大な消費市場に直面することを意味する。

これにより投資家は投資しようとする産業性質に基づき投資区域を選択すべきである。伝統産業の場合、中西部地域に投資することを提案する、そうすると更に政策支持を享受することができ、産業移転の流れに合わせて、新興市場において機先を制する可能性がある。金融、サービス又はハイテク製造の場合、沿海地域に投資することを提案する。そうするとより良い市場環境及び発展の機会を得る可能性がある。

2、産業計画計画を基に、投資は重点的に消費領域、特に農村消費市場に関心を向けるべきである

産業計画の面では、重点産業振興計画は各産業が係わる最終消費財又は耐久消費財に対して消費拡大支援を増加した。例えば、自動車産業計画を振興する目的は自動車消費を拡大し、内需を拡大し、排気量が少ない自動車及び新エネルギー車の発展を奨励することである。自動車消費を促進する主な措置は、自動車消費税の減免、自動車購入税の減免、新エネルギー車の支援、乗車期限1年前に強制廃棄する自動車に対して補償金を与えることである。各地で自動車消費に関する地方政策を打ち出すことを厳禁し、国産車の購入を推進している。

軽工業振興計画及び「家電下郷」等の政策を見ると、中国政府は、農村消費市場の開発に力を注いでいる。事実、産業移転に伴ってもたらした発展の機会及び都市化プロセスが浸透し、中西部農村の生活水準が着実に高くなっていて、その購入力が徐々に高まっており、新たな巨大消費市場が順次形成され始めている。

中国には9億人もの豊かになりつつある農民がおり、農村消費市場を開発し、シェアを確保することは中国政府産業振興計画の重要点だけではなく、投資家が投資プロジェクトを選択するときに重視する要素である。言い換えれば、投資家は“農村消費”と関連する投資プロジェクトを考慮するべきで、農村に適合する商品を開発し、販売することを提案する。。

3、中国の消費増加領域に合わせて投資プロジェクトを考えるべきである

前述によると、2009年度、中国における著しい消費領域は家電、自動車、住宅、旅行及び人口高齢化関連の消費である。

特定政策の刺激効果を除き、掘り下げてみると

(1)   家電等の消費が著しく増加するのは主として農村消費市場の逐次形成に役立つ。

(2)   旅行及び自動車消費の増加は中産階級を日々拡大させ、中産階級の生活のクオリティの要求を改善する。

(3)   住宅関連の消費の増加は中国都市化プロセスの大きな背景を反映する。

(4)   人口高齢化関連の消費は中国が逐次高齢化社会に入ることを反映している。

そのうち前述したように、“農村消費”と関連する投資プロジェクトについて、投資家は重視すべきである。これを除き、その他の関係する投資方向について、以下の通り分析する。

(1)   旅行と住宅消費の力強い増加は、中国の中産階級が既に基本体制を整えていることを示している。従って、中産階級の需要と関係がある産業、例えば観光旅行、余暇、有機食品、安全な農業及び農産物加工等は明るい将来性がある。

特に農業及び農産物加工プロジェクトは注目すべきであり、中国の食品事故が頻繁に発生したので、民間は食品安全問題に対して様々な配慮をしており(特に食品原材料とする農産物は深刻な農薬の残留及び加工汚染等の問題が普遍的に存在する)、これは既に中国の中産階級の集団的な焦慮となっている。日本は良好な農産物の生産技術及び品質管理制度を有するため、投資家が日本の先進的な技術及び経験を用いて中国において農業及び農産物の生産加工プロジェクトに投資すれば、より一層生活品質を追求する中産階級に対して巨大な吸引力を形成することとなる。

更に深く背景をみると、農業及び農産物加工プロジェクトに投資するのは、中国の都市化プロセスに有利となる。中国は一つの新たな段階に発展したので、工業化プロセスにおいて「農業が工業に補助を与える」(国家は農産物の価格統制を完全に開放していないので、 上級の農産物価格が長期的に低迷し、結果として工業を利することを主として表現する。)という現象は逐次消滅したが、都市化プロセスにおいて「工業が逆に農業を養う」という現象が歴史舞台に登場しており、国務院の各種文書における農業に対する補助はその顕著な現れである。

従って、農業”又は“農産物加工”に投資することは、中国の日々拡大する中産階級に対する巨大な吸引力を形成し、良好な政策支持を獲得することができ、同時に中国都市化プロセスの特定の流れに符合するので、投資家がこれを重点的な関心事とすることを提案する。

(2) 2009年度に住宅消費は急激に増加したが、現在では中国政府が発表した政策は、住宅価格を抑える傾向がある。都市化プロセスと直接関係がある産業(例えば、不動産、建材関連)が受けた影響及び将来性はまだ不明であるので、この産業を投資の重点とすることを提案しない。

(3) 2030年に中国は高齢化のピークを迎えるにあたり、2009年度では健康食品、薬品及びその他の老人用品に対する需要が絶えず増加した。このことは中国が高齢化社会になることを示しており、人口高齢化は変更不能の明確な趨勢である。従って、中国の人口高齢化との関連産業は真に「朝日の如き産業」であって、投資者はこれを重視すべきである。

前述に基づいて、投資者は各方面の要素を総合的に考慮して適当な投資プロジェクトを選択することを提案する。我々の認識するところでは総合的で多種の概念及び方向を交錯させることのできるプロジェクトが最も理想とするところである。

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