株主総会を開催していなかった為大変な事になった実例


司法書士法人リーガルバンク
司法書士 鈴木 泰幸

株主総会は「株式会社の組織、運営、管理その他株式会社に関する一切の事項について決議する(会社法第295条)」、国家に置き換えれば国会に相当する機関です。しかし、残念ながら日本の株式会社のほとんどすべてを占める同族企業においては、実際には開催されていないことが多いのが現状であり、会員様企業においても、100%もしくは100%近くの株式を家族・親族で保有していることを理由に、書面のみ作成している会員様も見受けられるようです。

「誰からも異議が出ない」ことを前提としたこの慣行は、ひとたび人間関係に亀裂が発生すれば、直ちに会社運営に重大な障害を引き起こす、大きな落とし穴となります。

今回は、その実例をご紹介致します。

1  自己株式の処分が無効になった例

株式会社甲

最初の株主構成

A(兄、社長)58%    B(弟)32%  自己株式10%(議決権なし)

(議決権 64.4%)   (議決権 35.6%)

Aが会社から自己株式を買い取った後の株主構成

A68%          B32%

株式会社甲は、社長Aと遠方で他社のサラリーマンをしているBの兄弟2人で、10%の自己株式を除く全株式を保有しておりました。AとBは非常に仲がよく、また、会社運営におきましてもAは常にBに相談報告したうえで決定しておりましたが、株主総会は議事録のみの作成にとどまり、実際には開催しておりませんでした。

2007年、Aはいつも通りBの承諾を得た後、会社が保有する10%の自己株式を、会社から適正価格で買い取り、これにより、Aは特別決議が可能となる68%(2/3以上)の議決権を確保しました。Aはいつもの通り電話でBの承諾を得ていたので、株主総会の招集もせず、開催もしておりませんでした。

ところが2010年、些細な行き違いをきっかけにAとBの関係が悪化したところ、行き違いが起きてから程なくして、Bから弁護士を通じ一通の内容証明が届きました。

2007年の会社からAへの自己株式処分は、株主総会の承認決議が不存在であり、無効なので、取得した10%の株式を会社に戻せ」という内容です。Aは驚愕し、弁護士にも相談しましたが、「実際に開催していない以上、残念ながら裁判になれば勝ち目はない。10%の株は元通り会社に戻し、後はBと仲良くやるしかない。」との回答でした。

3年前の、しかもBから承諾を得たはずの株式取得を無効とされるのが信じられませんでしたが、Bが何も聞いていないと主張し、また、株主総会を現実に開催していない以上、どうすることも出来ません。会社に10%の自己株式が戻った結果、Aの議決権比率は64.4%となり、特別決議の議決に必要な3分の2にあとわずか足りません。現在は毎年株主総会を開催しておりますが、議案に対してことごとく反対され、事業目的の追加・組織再編など、特別決議が必要な案件を何一つ実行できないでいます。

この事例から学ぶポイント

①株主総会を開催せずに決議した事項は、議決権をオーナー1人で持っていない限り無効(不存在)です。決議不存在確認の訴訟には提訴期限がなく、何年たっても無効(不存在)を主張出来ます。

不存在が認められた場合、登記も無効となるほか、電磁的公正証書原本不実記録罪という犯罪にも問われかねない結果となります。

②Aが形だけでも法律に則って招集手続を取っていれば、このような問題は発生しませんでした。Aが株主総会の招集通知を出して開催日に2人で会い、1分でも説明して10%の株式取得の承認を得ていれば(または委任状を提出してもらっていれば)何の問題もなかったのです。

ポイントは、「開催したかしていないか」です。

2  この事例から学ぶ類似事例

上記の実例のほかに、下記の事例もご紹介いたします。実例ではありませんが、いずれも類似事例が全国で起こっています。

① 乙社は、兄のA社長が60%、弟のB専務が40%の株を持ち、兄弟は仲違いすることもなく、会社運営を行っておりました。株主は2人ですので、特に株主総会を開く事もありませんでした。

ところがBが死亡したところ、Bの株式を相続した妻Cから決議不存在の訴えがあり、それまでの定款変更はすべて無効になりました。Aは再度、適法に定款変更をしようとしましたが、60%しか議決権がなく、定款変更できる特別決議(67%以上2/3超)の議決権を有していないので出来ません。

② 丙社は、オーナーのA社長が99%の株式を保有し、他人のBが1%保有していました。AはBが今まで会社運営に対して何ら発言・異議がなかったこと、99%も株式を保有していることから、会社分割を行うにあたって株主総会を開催せずに議事録のみを作成、登記も済ませました。

すると突然、Bが1%の議決権を主張し、株主総会が行われていないので会社分割は無効と言ってきました。Aはやむなく会社分割登記を抹消し、後日改めてBに招集通知を出し、適法に株主総会を開催したうえ、会社分割登記をやり直しました。

結果、社は、決算期を越えてのやり直しとなり、期末中に行う予定だったさまざまな節税対策がすべて間に合わなくなり大損害となりました。

3  結 論

100%もしくはそれに近い議決権を持っていても、株主総会を実際に開催しないと「決議不存在確認訴訟」というリスクを永久に背負う事になります。

まして、他人株主がいる会社では株主総会の開催が絶対に必要です。

4  株主総会の開催方法

① 細かい事は、たくさんの本や解説書に書かれておりますので、ここはイメージとして捉えて頂くため、大きく3つに絞りました

招集通知発送(委任行含)

実際に開催して適法に決議、報告を行う

決議内容を株主に通知する(任意)

② 現在は、株主全員が取締役からの提案に書面で賛成した場合、株主総会の決議があったことにすること(書面決議)も可能になっております。

しかし、長い年月が経ってから知らなかったなどと言われないように、やはり簡易的にでも開催し、互いに確認しておいた方がよいと思われます。議決権の3分の2以上を確保し、実際に株主総会を開催していれば、この種のトラブルは回避可能です。

今後、株主総会を初めて開催する会員様、又現在開催している会員様でも、ご要望がありましたら河野コンサル、司法書士法人リーガルバンクで、書類作成や株主総会の立会などを行っております。

お気軽にお申し付け下さい。


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