遺言状作成の奨め


浅岡・瀧法律会計事務所

弁護士 瀧  洋二郎
1 遺言状作成の効果と目的
遺言状は、大まかに言って通常次のような効果が考えられています。
① 生前に各相続人の相続分・相続財産を指定し、相続が発生した後遺産分割協議を要せず相続を確定して、相続人間の紛争を防止する。
② 法定相続分を、遺留分の範囲(法定相続分の2分の1)までの間で、変更できる。
③ 紛争を回避しつつ、安定的に事業承継を達成する。
出来れば普段からの事業承継準備の仕上げとして利用すれば、一層の効果を上げられる。
どなたかの死亡に伴い相続が発生した場合、相続人間で紛争が生じることは真に多くなってまいりました。その結果家族内の円満な関係が破壊され、お互いに終生気まずい生活をすることになる恐れがあります。そのような中、親としてはその点にも配慮し、せっかく遺した遺産が相続人全員にとって本当に役に立つ形で相続してもらうと共に、相続人間での紛争を予防しておくことは、重要なことであります。そしてこの円満な関係の保持は、事業の安定的承継と安定的経営の継続を実現するためにも非常に重要であります。
2 遺言状作成に当たって取るべき基本的な考え方
前項で述べましたように、遺言状を作成して相続人間の紛争を防止するには、それなりの配慮が必要です。この配慮なくして遺言状を作成しても、紛争の予防はあまり期待できません。従って遺言状作成に当たっては次のような基本的考えをとるべきであります。
① 各相続人に相続させる遺産の評価額は、次項3に説明しますような遺留分相当金額より、多少これを超える程度の相続をさせるよう考慮すること。
② どちらかと言えば、仮に全く相続財産を渡したくない相続人がいたとしても、上記①で書きましたように遺言状では、遺留分相当額以上の資産を必ず相続させるようにしましょう。遺留分相当金額の相続をさせないときは、「遺留分減殺請求権」を行使し、遺留分だけの相続を確保するための訴訟が提起され、紛争が生じることとなります。
日頃からの親子の確執を、遺言状で晴らすような考えで遺言状を作成することは、かえって相続人間の紛争を深刻なものとし、本来あるべき遺言状を作成する目的とは全く相容れないことであります。
仮にこのような親子間の確執があったとしても、そのような関係の子であるからこそ、多少なりとも遺留分より多めの相続をさせることにより、その相続人もあるいは改めて反省もし、親の愛情や有難さを感ずるきっかけを与えることも期待されます。これが相続人間の円満さを保ち、また事業の承継や経営が安定的に継続実行出来る基となるものと考えられます。
尚ここで「多少なりとも遺留分より多めの相続」と言う意味は、相続資産の評価額が明確に確定しているわけではないことと、遺言状作成時と相続開始時とが一致せず、多少の金額の変動が予想されることから、遺留分評価額を出来るだけ安全圏で把握するためには、多少金額加算しておくのが安全であろうと言う判断に基づくものです。
③ しかしそれでも揉めたい相続人の存在を否定出来ません。だが上記の様な考え方で作成され、各相続人全員に遺留分相当額を少しでも超える相続をさせるときは、基本的には裁判上の紛争を起こしても、裁判所の認めるところとはならず、多額の費用を使って意味の無い紛争を提起することとなりますので、この点でも紛争の予防に大きな効果を及ぼすこととなると考えられます。
3 法定相続分と遺留分
①法定相続分は基本的には次の通りです。
配偶者・・・全遺産の1/2
子 供・・・全遺産の1/2÷子供の数
② 遺留分・・・上記法定相続分×1/2
尚相続財産の範囲については、被相続人の死亡時の全資産の外、生前に相続人の内の1人乃至複数人に、ある程度の額の資産を贈与等により渡してあって、そのほかの相続人に比べて特別に利益を得ていると認められる場合(特別受益と言います)は、その贈与等された資産も相続財産として計算されることがあります。遺留分の計算に当たっては、このような特別受益の資産があるときは注意して計算しておく必要があります。
4 遺言状の様式の種類と作成の仕方
特別な様式の遺言書を除き、通常作成されている遺言状の様式は次の3通りです。
① 自筆証書遺言=遺言者本人が遺言状の全文・日付および氏名を自書し、押印する。
② 秘密証書遺言=署名以外は手書きでなくともよいが、必ず被相続人本人の署名押印をした遺言状を封筒にいれ、糊付けしたところには全て印鑑で封印して公証役場に提出する。そして公証人と証人2名以上の立ち会いの下、遺言書の存在を証明する文書を作成する。自筆証書遺言と公正証書遺言の中間的遺言状。
③ 公正証書遺言=公証役場で手数料を支払い、公証人に遺言書を作成してもらう。
・遺言状はそのものの性質上、偽造遺言状や強制遺言状等を防止し、また被相続人本人の、真意に基づいた自由な遺言を担保するため、厳格な様式が要求されるほか、自筆証書遺言では開封に当って、裁判所の検認手続を必    要とします。
・また遺言状の文面の表現、文字等により解釈が確定したものでなければ、却ってその表現の仕方によりその解釈をめぐって紛争が生じることがあり、折角遺言状を作成しても、その目的を達せられないばかりか、新たな紛争の原因となる恐れもあります。
・したがって遺言状を作成するときは、出来るだけ公正証書遺言を作成しましょう。公正証書遺言は、裁判所の検認手続も不要ですし、作成にあたって公証人が関与しますので、文章上表現上の問題もある程度回避できます。

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