中小企業のM&A


税理士法人トーマツ大阪事務所

パートナー 原 浩之
1.  『M&A』とは企業の合併・買収の総称をいいます。一般的なM&Aの買い手と売り手のメリットをご説明します。
・買手のメリット
他の事業分野への進出等の事業拡大あるいは既存の事業強化ができる。
自社で新規に人・モノ・カネを投入する場合、多額の投資コスト・時間的コストがかかることがありますが、M&Aなら投資コスト・時間コストの節約が期待できる。
・売り手のメリット
後継者が不在で事業継続が困難な場合、M&Aが成立すれば、事業は継続し、従業員の雇用、取引先との信用も維持できる。
M&Aにより自社より大手の傘下に入ることにより、経営基盤・信用力の強化が期待できる。
経営の集中と選択等によりコア事業以外のノンコア事業を廃止・清算するよりM&Aの方が受取金額が多くなることが期待できる。
2.  『M&A』には、下記の形態が考えられます
(ア) 資本移動を伴う①合併②分割③株式交換・株式移転④事業譲渡⑤金銭による株式買取⑥新株の引受
(イ) 資本移動を伴わない業務提携(OEM生産、共同開発)
3.  中小企業のM&Aとしてよく利用される形態は、『合併』『事業譲渡』『金銭による株式買取』であり、とくに『金銭による株式買取』が最も利用されています。
4.  『金銭による株式買取』を利用する理由は、以下のメリットがあるためと考えられます。
(ア) 買収先の企業が保有している商圏、許認可権、人材等の資産をそのまま引き継ぐことができます。
(イ) 株式の譲渡者が個人株主の場合、売却益について他の所得と分離して20%を課税されるだけであり、手元資金を多く残すことできる可能性があります。
5.  逆に、『金銭による株式買取』のデメリットは以下の項目があります。
(ア) 買収先の企業自体の不良資産(回収見込みのない売掛金、陳腐化した在庫等)、潜在的な債務(未計上の支払債務、法的訴訟リスク等)もそのまま引き継いでしまうリスクがあります。
↓リスク軽減策
潜在的な債務等の引き継ぎのリスクを回避するには、必要な資産・負債だけを取得する『事業譲渡』の形態を利用することが考えられます。
(イ) 買収先の企業の株価および購入株数により、多額の現金が必要となります
↓代替案
多額の現金が調達できない場合は、現金の代わりに自社の株式を買収先企業の株主に対価として交付する『合併』の形態を利用することが考えられます。
但し、『金銭による株式買取』に比べて『事業譲渡』『合併』は手続きが煩雑であること、買収先の企業の資産に含み益がある場合、含み益について法人税が課される等の税制上のデメリットも考えられますので、事前の十分な検討が重要となります。
6.  また、世界的な信用収縮のため十分な資金調達が困難となっています。従って、今後は中小企業においても金銭ではなく自社の株式を対価とする『株式交換』の活用も検討される可能性があります。

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