会社経営と株式分散のリスク

株式会社河野コンサル
執行役員 太田 久也

オーナー企業にとって、株式の分散は会社経営上のリスクであることはご承知のとおりであると思います。

今回はここ数年弊社に寄せられたご相談の中で、是非皆様方の今後の経営戦略、資本政策上のご参考となるべく事例をいくつかご紹介させていただきたいと思います。

≪事例1≫

今後の環境の変化に柔軟に対応できるよう、組織の集約化と業務の効率化を図るため、合併と会社分割を実施しようとしたところ、思わぬ伏兵により、結局合併と会社分割を中止せざる得なくなりました。合併や会社分割を実施するにあたっては、法律上、反対株主には株式買取請求権が発生します。今回それを行使されれば、買取金額をめぐって裁判となることは必至で、最終的には莫大な出費が発生することが予想されたからです。

≪事例2≫

後継者はおり、かつ業績は順調にもかかわらず、同族内での意見の食い違いにより、最後には何一つ決定することができず、最終的には会社を売却して、現金で精算せざるを得なくなりました。

≪事例3≫

役員として株を持たせておりましたが、意見の相違により、株を持ったまま退職、後日、株を買い取って欲しいとの要求から裁判に発展し、結局、莫大な金額で買い取らざる得なくなりました。

≪事例4≫

老舗の超優良企業。毎年恒例の株主総会も平穏無事に終わると思いきや、突然の緊急動議により、創業家出身の社長が役員として再任されず、会社を追放されました。あとからわかったことですが、すべて事前に綿密に仕組まれた上でのことであり、結局『資本の論理』には逆らえず、会社を乗っ取られたのです。

いずれも単なる株式のトラブルにとどまらず、会社の重要な経営戦略に支障を来す、会社を手放す、あるいは、会社を乗っ取られることになってしまった事例です。

原因は安易に株式を分散したことであることは明白ですが、今一度よくご認識していただきたいこととして、『会社の株式は会社そのものである』ということです。

株式の財産上の問題(特に相続税)は確かに大変ではありますが、言ってしまえば、お金の問題であり、事前に準備することで対応は十分可能です。

しかし、株式の権利のトラブルは単なるお金で解決できる問題にとどまらず、会社の重要な経営戦略に支障をきたす、あるいは、最悪会社を失ってしまいかねないことをよくよく肝に銘じておくべきだと思います。

お客様のニーズに応える、雇用を確保する、地域社会に貢献する等、すべては会社あってのことです。

今後の経営環境は益々厳しくなることが予想される中、オーナー企業の最大の強みである、“独自性”をいかんなく発揮するためには、全社一丸となって、敵を身内に作らず、迅速な意思決定、スピーディーな会社運営が必要不可欠となります。したがって、そのために必要な経営戦略、資本政策としては

(1)分散している株式があれば、できるだけ買い集め、将来のトラブルを未然に防止する。

(2)後継者への株式の引き継ぎに支障が生じないよう、事前に準備対応をしておく。

上記はいずれもコストはかかりますが、会社継続のための必要コストと捉え、大競争時代に備えた万全の体制を整えておくことがオーナー企業における事業承継対策の主眼であると思います。

 

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