税理士からみた自社株対策の重要性

早川会計事務所
税理士 早川 智之

平成27年1月より相続税・贈与税の増税が予定されているなか、贈与税の配偶者控除を検討されている方からの相談が多くなってきました。

贈与税の配偶者控除とは、婚姻期間が20年以上の夫婦間で、居住用不動産もしくは居住用不動産の取得資金を贈与した場合、贈与税の計算上、基礎控除110万円のほかに2,000万円まで控除できるという制度です。しかも、相続開始前3年以内の生前贈与の相続財産への加算もありません。

居住用財産を贈与する際には、不動産取得税や登記費用がかかり、また贈与した土地については、小規模宅地の評価減特例を受けられなくなるというデメリットもありますが、それでもなお将来の相続税の増税を見込んで、贈与税の配偶者控除を検討されている不動産オーナーがいらっしゃいます。

では、相続税及び贈与税において、自社株につきどのような特例があるのか、不動産における特例と対比しながら、概観したいと思います(下図)。

不動産

特例など

自社株(非上場株式)

あり

特例①:贈与税の配偶者控除

なし

あり(※1)

特例②:評価減の特例

なし

あり(※2)

特例③:納税猶予

あり(※3)

あり(※4)

特例④:相続税の取得費加算の特例

あり(※4)

不動産取得税・登記費用

(※5)

移転時のコスト

なし

※1 被相続人が居住の用もしくは事業の用(同族会社への貸付含む)に供していた宅地を相続した場合において、一定の要件のもと、当該宅地の評価額のうち80%又は50%を減額する制度です。
※2 農業相続人が農地を相続した場合において、終身営農(一部の農地においては20年営農)を条件に、農地の評価額のうち農業投資価格を超える部分については相続税の納税を猶予する制度です。農業相続人の死亡(一部の農地については20年間の農業継続)により猶予された税額の納税が免除されます。贈与税の納税猶予制度もあります。
※3 経営承継相続人(後継者)が非上場株式を相続した場合において、株式の継続保有、5年間の雇用の8割維持等を条件に、相続した株式(ただし相続前保有株式とあわせて、発行済株式総数の3分の2に達するまでの部分)について、当該株式の課税価額の80%に対応する相続税の納税を猶予する制度です。経営承継相続人が当該株式を終身保有していた場合には、猶予された相続税の納税が免除されます。贈与税の納税猶予制度もあります。
※4    相続の日から3年10ヶ月以内に、相続により取得した土地、建物、株式等を譲渡した場合において、譲渡所得の計算上、相続税額のうち一定の方法により計算した金額を取得費に加算する制度です。
譲渡した相続財産が自社株の場合には、譲渡した自社株に対応する相続税額が取得費に加算されますが、譲渡した相続財産が土地の場合には、相続により取得したすべての土地に対応する相続税額が取得費に加算されます。
ちなみに、相続の日から3年10ヶ月以内に、相続により取得した株式をその発行会社に売却した場合、みなし配当課税の適用はなく、譲渡所得課税になります。
※5 相続の場合は、不動産取得税がかからず、登記の際の登録免許税も軽減されています。

このように不動産は自社株に比べて税法上の特例が多いことがわかります。

自社株も納税猶予の制度があり、この制度を活用して自社株対策をすることが考えられます。納税猶予制度も、会社によっては、大変有効な手段ではありますが、人気がある制度とはいえないというのが現状ではないでしょうか。

その不人気の理由は使い勝手の悪さにあります。納税猶予適用後5年間、雇用の8割を維持しなければならいないこと、後継者が存命中、納税猶予対象株式を保有し続けなければならないこと、贈与税の納税猶予制度を使って、次の後継者に贈与するにしても、贈与の時までに、役員を退任しなければいけないことなど、経営の自由度を狭めてしまうことが、納税猶予制度を利用することに二の足を踏ませてしまう原因であると思います。

東京税理士会をはじめ、各地の税理士会が税制改正意見書で納税猶予制度の改正を盛り込んでおり、この制度の使い勝手の悪さをうかがい知ることができます。

では、自社株対策の手法が限られるなか、自社株対策をどのように進めていくかですが、持株会社や従業員持株会の活用に行き着くのではないかと思います。

自社株対策は一朝一夕にはできませんので、長いスパンで自社株対策を考えることが肝要です。会社の資金繰りに無理を与えない範囲で自社株対策をし、それでも残った自社株については、発行会社への譲渡(金庫株)及び相続税の取得費加算の特例を視野に入れることも必要であると思います。

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