税理士から見た資本政策 ~100%減資~(後)

早川会計事務所
税理士 早川 智之
税務的には、減資や増資は資本取引と呼ばれ、法人税の課税対象にはなりませんが、債務免除は損益取引となり、債務免除益に対して、法人税が課されることになります。ただし、経営破綻の状況では、多額の欠損金がありますので、債務免除益と欠損金が相殺される形で法人税の納付が生じることは少ないと思われます。

では、召し上げられた株主側の課税はどうなるのでしょうか?冒頭の質問に繋がります。

法人株主の場合は、100%減資が合理的な再建計画に基づいて実施されていれば、無償譲渡による譲渡損失を損金に計上できます。

個人株主の場合は、当該株式を特定口座に保管していた場合で、上場廃止に伴い特定管理口座に移管し、100%減資が実施されるまで継続して特定管理口座で保管していた場合には、他の株式の譲渡益と相殺して株式譲渡所得を求めることになります。その場合には、証券会社が発行した「価値喪失株式に係る証明書」を確定申告書に添付する必要があります。

ただし、非上場株式の譲渡損と同様の取扱いになりますので、その年の株式譲渡益とは相殺できますが、譲渡益と相殺しきれなかった部分については、3年間の繰り越しはできません。

個人株主で特定口座において保管していなかった場合には、他の株式譲渡益との相殺もできません。

冒頭の相談者は特定口座で保管していなかったため、何ら税務上の手当てもありませんでした。株主によって、譲渡損の税務上の取り扱いが大きく異なり、実に難解複雑です。

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