株主総会を開催していなかった為大変な事になった事例

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司法書士 鈴木 泰幸
現在、会員様の会社では、株主総会を行っている会社と、行っていない会社があります。株式を100%もしくは100%近くを同族でもっておられる会社は、行っていない場合が多く見受けられます。
通常は、株式を100%同族で持っていれば、誰からも文句を言われる事がないからですが、実はここに大きな落とし穴があるのです。
今回は、その事例をご紹介致します。
株主総会を開催していなかった為大変な事になった事例

株式会社甲は、兄のAが55%(議決権65%)、弟のBが30% (議決権35%)、自己株式15%(議決権なし)と、全株式を兄弟で保有しています。Aが社長として社業一切を取り仕切り、Bは他社でサラリーマンをしております。
AとBは非常に仲がよく、Aは会社の業績や運営について常日頃からBに連絡し、了承を得ていましたが、いつも電話連絡のみで実際には株主総会を開催することもなく、議事録も特段作成していませんでした。
そのような状況の下で2005年、Aは会社から金庫株を適正な価格で買い取り、一人で特別決議が可能となる70%(2/3以上)の議決権を確保しましたが、この時もAは、いつものように電話でBの了承を得たものの株主総会の手続を取らず、議事録も作成しませんでした。
それからもAは何の問題もなく、相変わらず重要な事はBに連絡し、了承を得ながら会社運営を行っておりました。ところが2010年にAとBが些細な行き違いから仲が悪くなったところ、行き違いが起きてからしばらくして、Bから弁護士を通じて一通の内容証明が届きました。
「2005年の会社からAへの自己株式処分は株主総会の決議不存在により、無効です」という内容でした。
Aは驚きました。5年前の、しかもBからの了承を得たはずの自己株式処分がこんな形で無効となるのが信じられませんでした。しかし、今となっては当然Bは何も聞いていないと主張しますし、何より株主総会を開催していない以上無効なのです。
Aの弁護士は、Aに対しこう言いました。
「残念ながら、開催していない以上金庫株の取得は無効なので、15%の株式は元通り会社に戻し、今後はBと仲良くやるしかない。」と。
自己株式の処分が無効となったことからAの議決権比率も65%に戻り、特別決議を行う事が出来ません。それからは毎年株主総会を開催しておりますが、全議案に反対するため特別決議が必要な定数変更や組織再編などを行うことができず、困っています。

この事例から学ぶポイント
①株主総会を開催せずに決議した事項は、議決権をオーナー1人で持っていない限り無効(不存在)です。決議不存在確認の訴訟には提訴期限がなく、何年たっても無効(不存在)を主張出来ます。
不存在が認められた場合、登記も無効となるほか、電磁的公正証書原本不実記録罪という犯罪にも問われかねない結果となります。
②Aが形だけでも法律に則って招集手続を取っていれば、このような問題は発生しませんでした。AとBが食事も兼ねて開催日に2人で会い、AがBに1分でも説明して自己株式処分の承認を得ていれば(または委任状を提出してもらっていれば)、後は、食事と雑談だけでも、株主総会は適法に開催された事になり、何の問題もなかったのです。
ポイントは、「開催したかしていないか」です。

2.この事例から学ぶ類似事例
先の実例から考察しますと、今後下記のような類似事例も考えられます。
① 乙社は、社長のAが60%、 専務のBが40%の株式を持ち、兄弟仲良く会社運営を行っておりました。株主は2人ですので、特に株主総会を開く事もなく株主総会議事録も作成しておりませんでした。
その後Bが死亡したところ、Bの相続人である妻Cから決議不存在の訴えがあり、それまでの定款変更はすべて無効になりました。
Aは再度、適法に定款変更をしようとしましたが、60%しか議決権がなく、定款変更できる特別決議(67%以上2/3超)の議決権を有していないので出来ません。
もし、AB2人が同席して株主総会を開催し、議事録を作成しておけばこのような事にはなりませんでした。
②丙社は、社長のAが株式の99%を持ち、他人のBが1%を持っていました。
Aは、Bが今まで株主として会社や自分に対して意見を言ったこともなく、仮にBが反対だったとしてもAが99%も株式を持っており決議に問題がなかったことから、株主総会をせず議事録だけを作成して会社分割を行い、登記も済ませました。
すると突然、Bが1%の議決権を主張し、株主総会が行われていないので会社分割は無効と言ってきました。Aはやむなく会社分割登記を抹消し、後日改めてBに招集通知を出し、適法に株主総会を開催した上、会社分割登記をやり直しました。乙社は、決算期を越えてのやり直しとなり、期末中に行う予定だったさまざまな節税対策がすべて間に合わなくなり大損害となりました。
3.結論
このように100%もしくはそれに近い議決権を持っていても、株主総会を実際に開催しないと、永久にリスクを背負う事になります。
同族以外の株主がいる会社では、招集手続を適正に行ったうえで、株主総会を実際に開催することが絶対に必要です。
4.株主総会の開催方法
細かい事は、たくさんの本や解説書に書かれておりますので、ここはイメージとして捉えて頂くため、大きく3つに絞りました。
①招集通知を発送する(欠席者から委任状を取りまとめる)
②実際に開催して適法に決議、報告を行う
③決議内容を株主に通知する(任意)
また、株主全員が取締役からの提案に書面で賛成(同意書を提出)した場合、株主総会の決議があったことにすること(持回り決議)も可能になっております。
しかし、長い年月が経ってから知らなかったなどと言われないように、やはり簡易的にでも開催し、互いに確認しておいた方がよいと思われます。議決権の3分の2以上を確保し、実際に株主総会を開催していれば、この種のトラブルは回避可能です。
今後、株主総会を初めて開催する会員様、又現在開催している会員様でも、ご要望がありましたら河野コンサル、司法書士法人リーガルバンクで、書類作成や株主総会の立会などを行っております。
お気軽にお申し付け下さい。

 

 

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