インターネットで資本政策を検索すると出てくるのは、上場を目指す未上場企業の資本政策の記事ばかりである。
自己資本が10億円を超える未上場の有力企業は、上場会社より内容の良い会社がたくさんある。その数、日本に7000社はあると推定される。
しかし、その資本政策の記事はほとんど見当たらない。
上場を目指す資本政策の専門家である証券会社のアナリストや公認会計士はたくさんいるが、未上場の有力企業の資本政策の専門家はほとんどいない。
なぜであろうか?
ここにある数字を提示する。
現在、上場する為の初期費用は、会社の規模にもよるが5000万~1億2000万といわれている。
又、上場してからの維持コストもある。株主総会の運営、名簿管理、監査法人の報酬などを入れると、やはり1年で5000万~1億といわれている。
しかも、最近はコンプライアンスの強化により、年々上昇傾向にある。
会社にとっては、巨額の負担であるが、証券会社、監査法人にとっては巨額の利益である。
費用面だけから考えても、これらの専門家が未上場の有力企業を上場に導くのが熱心なのは当然である。だから、未上場の有力企業が上場しないと決定すると、これらの専門家は去っていくのである。
だから、できないのである。
これには、費用面以外にも大きな理由がある。それは、上場企業の資本政策と、未上場の有力企業の資本政策とはまったく逆の考え方で、行うからである。
上場企業の資本政策は、会社を私物化せず、株式を上場基準に基づき分散する。又、重要事項は取締役会の合議制により運営していく。
そのかわり、社長に個人保証はない。
未上場の有力企業の資本政策は、オーナー同族が株式を所有し、会社を守る。
散らばった株を集め、二度と散らばらないようにする。
重要事項は、オーナー1人で決断し、個人保証による責任を取る。
まとめると以下のような考え方になる。
上場企業は、株式を分散する為の資本政策。未上場の有力企業は、株式をオーナーに集中する為の資本政策。
上場企業の資本政策のプロは多いが、未上場の有力企業の資本政策プロは非常に少ない。しかし、やはりこの分野にも、プロ中のプロはいるのである。
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