近年、オーナー企業を取り巻く環境において、三つの重要な動きが見られます。第一に、政府の「新しい資本主義」の一環として会社法改正が検討されており、従業員への株式無償交付が議論されています。これにより、従業員が企業価値向上に直接関心を持つことで労働市場での競争力が高まり、優秀な人材の確保や定着が期待されます。また、これまで株主に偏っていた利益配分の見直しが進み、従業員への利益還元が促進される可能性があります。しかし、現行の従業員持株会制度とのバランス調整が課題となるでしょう。第二に、国税庁の株価算定ルールの見直しが進んでいます。会計検査院から、類似業種比準方式が他の方式に比べて著しく有利で公平性に欠けるとの指摘がありました。特に、大きな資産を持ちながら利益が少ない企業では、類似業種比準価額が純資産価額より大幅に低くなる傾向があります。本来、純資産価額方式による株価算定は、事業承継時の相続税負担を過大にするため、負担軽減策として類似業種比準方式が導入されました。しかし、今後は公平性を考慮した抜本的な見直しが行われる可能性があり、オーナー企業は慎重に対応する必要があります。第三に、非上場株式を専門とする買取業者の存在感が増しています。これらの業者は、少数株主から株式を買い取り、会社に株式譲渡承認請求を行い、承認が得られない場合は裁判所に株式売買価格の決定を申し立てる手法を取ります。これにより、会社側が高額な買取負担を強いられるケースが増加しており、オーナー経営者にとって新たなリスクとなっています。これらの動きは、非上場企業の経営環境に大きな影響を与えるため、オーナー経営者は法改正や税制の変化を注視し、自社の株価への影響を把握することが重要です。また、従業員持株会制度の見直しや、少数株主への対応策を検討し、適切な戦略を講じる必要があります。時代の変化に対応し、企業の持続的な成長を目指しましょう。詳細:-代表からの提言-株式買取業者とその問題点-裁判実務における株式売買価格の決定方法-従業員等に対する株式の無償交付-非上場株、相続税で格差 会計検査院が指摘